カフェ・ノリカロ café noricaro

モノトーンを基調としたシックな外観に、ストライプのオーニングと真鍮(しんちゅう)色のロゴがアクセント。そんな「カフェ・ノリカロ」は、2024年12月に古瀬地区にある吉野口駅の改札前にオープンしました。ピカピカに磨かれたガラス戸を開くと、店主の祖母や曽祖母の嫁入り道具だったという大きな長持(衣類や寝具などを入れるための長方形の木箱)を活かしたカウンター席が目に飛び込んできます。

「以前パリでカフェ巡りをしたとき、昔の建物をリメイクしたお店が印象に残っていて、それを参考にしたんです」と店主が話す通り、リノベーションされた広さのある店内には色とりどりのコーヒーカップや雑貨、手作りスイーツ、絵画、装飾品、季節の花や観葉植物などがずらり。一見コンセプトがバラバラの個性的な品々が、店主の感性によって美しいまとまりとなり、心落ち着くユニークな空間になっています。

ハンドドリップで抽出するコーヒーは、メキシコ・ニカラグア・コロンビアをブレンドしたコク深くリッチな味わい。そのほか鉄急須で提供される日本茶、中国茶、ジュース、ビールなど、ドリンクの種類も豊富です。隠し味にコーヒーを使った特製カレー、ホットサンドなどの軽食、デザートメニューも用意されています。中でも、ナッツの黒糖キャラメリゼはオープン時から人気の定番商品。コーヒーとも相性抜群で、テイクアウトもできるので、ちょっとしたお土産にもよさそう。メニューのほとんどを500円や1000円といったシンプルな価格に設定しているのは、電車の待ち時間や乗り換えなど、限られた時間で利用される方にもなるべく手間なく会計してもらえるようにという配慮からです。

吉野口駅では、明治29年の開業時に建てられた木造駅舎や石積みのプラットホームが今も活躍しています。この駅の佇まいに惹かれて訪れる人もいるなか、駅正面の建物「元大阪屋商店」は、長い間空き家になっていました。老朽化が進み、クモの巣が張った状態が続いていることに胸を傷めていた店主は「改札を出て一番に目に入るこの場所がボロボロのままではいけない。きれいにしたい。」という思いに駆られ、地元工務店や職人の方、地域の方の協力も得ながら自らDIYに挑戦するなどして、カフェのオープンに至りました。改装前の様子やノリカロが少しずつできあがっていく過程は、お店のインスタグラムに記録されています。

閉ざされていたシャッターが開き、新しい光が灯された今昔が心地よく混ざり合う空間で。100年以上人々を見守ってきた木造駅舎を窓越しに眺めながら、おいしい時間をゆっくりとお楽しみください。

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