喫茶ICHINENは、長年企業に勤めた木之下雅則さんが定年退職後、御所まちにある築100年の実家の建物を改装して始めた小さな喫茶店です。オープンしたのは2016年。店内には小さな坪庭やペレットストーブがあり、ジャズやボサノヴァが流れる落ち着いた店内で、焼き菓子や軽食、こだわりの自家焙煎珈琲や紅茶を楽しむことができます。当初は軽い気持ちで週2日ほどの営業をしていましたが、だんだんとお客さんが増え始め、いろんな要望に応えるうちに、現在の週5日営業になりました。

珈琲・紅茶はもちろん、トーストにゆで卵がついたモーニングセット、カレーやスパゲッティ、無添加厚切り熟成ベーコン の BLT サンドなどがメニューに並ぶなか、一番のおすすめは日曜日の午前中のみ、しかも5食分しかつくらないというサンデーブランチの「パンケーキセット」。木之下さんがハワイを訪れるたびに食べたという、ローカル店のパンケーキのおいしさを再現したメニューです。

また、使用している珈琲豆は、産地や生産者がわかり、品質も安定するスペシャリティ珈琲の生豆を取り寄せ、ひとつひとつピッキングし、自家焙煎したもの。事前に連絡すれば珈琲豆の購入も可能です。「10年目にして、最近ようやく落ち着いてきた」と笑う木之下さんは、今も少しずつ始めている「夜の一組限定ディナー」の受け入れも増やしていきたいと考えています。

その昔、この街が嫌いだった木之下少年は大人になり、街を離れ、戻ってきて改めて「御所の街は住みやすい」と感じているそう。一方で、過疎が進む現実は確かにそこに存在しています。でも、だからこそ、このお店が、「一人で来ても誰かがいて話ができる」というふうに、人の関係をつなぎ直す場所になりたいと木之下さんは願っています。

もし、あなたが誰かと話したくなったら、喫茶ICHINENを訪ねてみてください。珈琲のいい香りがする居心地の良い空間に、話せる誰かが、きっといるはずですから。