高鴨神社は御所の南西部、金剛山麓の「鴨神」という地域に鎮座する、全国鴨（加茂）社の総本宮であり、弥生時代の中期より祭祀を行う日本最古の神社のひとつです。主祭神は、阿遅志貴高日子根命（あぢしきたかひこねのみこと）。別名を迦毛之大御神（かものおおみかみ）というこの神様は、死した神をもよみがえらせるほどの力をもつとされ、古くから人々の信仰を広く集めてきました。

鴨神というエリアは、大和の古代豪族である「鴨族」の発祥の地であり、高鴨神社も、鴨族が自らの守護神として祀ったとされています。「カモ」という言葉は「カミ」と同源であり、「カモす」という言葉から派生して「気」が放出している様子を表すのだそう。平安時代に編纂された法典『延喜式』の神名帳にも名を連ねる名神大社で、非常に高い社格を誇る神社でもありました。現在の本殿は室町時代に再建されたもので、その彫刻や極彩色に彩られた社殿は国の重要文化財に指定。明治時代から幾度となく、大切に修理・復元が行われてきました。

こんもりとした鎮守の森の入り口にある朱色の鳥居をくぐると、拝殿・本殿へまっすぐに続く参道が目に入ります。よく晴れた穏やかな日には、大きな紅葉がそよ風に葉を揺らし、木漏れ日が差し込む境内に杉の巨樹がそびえる、荘厳な風景が広がります。

新しく涼やかな佇まいの拝殿は、2017年に建て替えたもの。その左右にはそれぞれ摂社に通じる階段があり、東宮は奈良県指定文化財。また、西宮に通じる道程には、木々が思い思いに枝葉を伸ばす心地よい森が広がり、大きな池を横目に見ながら歩くだけで気持ちの良い時間を過ごせます。帰る頃にはきっと後ろ髪を引かれる、美しく爽やかな神社です。