大川杉 Okawasugi Cedar

御所市と五條市の境界近く、県道216号西佐味中之線のかたわらに「大川杉」と呼ばれる一本の巨木が生えています。棚田の真ん中にそびえ立つその杉の木は樹齢600年以上といわれ、樹高28メートル、幹回りが6メートル以上という雄大な姿をしています。大正時代の終わりに落雷の被害を受け一部が枯死しましたが、樹勢は衰えず、竹藪に囲まれた小道を抜けて根元近くから見上げれば、自然と背筋が伸びて手を合わせたくなるような神々しさすら感じられます。

大川杉のある西佐味集落は金剛山麓の中腹にあたり、大きな川がなく、昔は水不足で困っていたそうです。それが、ある日照り続きの夏、干ばつで稲や作物が枯れ、村人たちがいよいよ苦しんでいたときに、村はずれにある大きな杉の木の根元から突然水が湧き出しました。その水は大川となって新池に注ぎ、飲用水や灌漑用水となって人々を救ったといわれています。

村の人たちはこの水を「命の水」と喜び、大川杉の根元に地蔵を祀りました。その後、大川神社として水神を祀る祠が建てられましたが、昭和後期に合祀され、この場所は現在高鴨神社の所有地となっています。当時に比べ湧水の水量は少なくなったものの、大川杉の根元からは今でも清らかな水がこんこんと湧き続けています。水道が通った今でも地域の人々は「この木を切ってしまうと水が出なくなり不作になるになるから、干ばつから村を救った大川杉を大切にしなければならない」という言い伝えを守り、毎年7月の最終日曜日には世話役の楳田さんの声かけで集まって、各家から持ち寄った藁で綯った注連縄を大きな幹に巻きつけて豊作を祈念する神事を営みます。

「子どもの頃にはスイカを冷やしたり沢蟹を捕ったりと良い遊び場だった」と笑う楳田さん。田植え前には皆で協力し合って井出上げを行ったりと、大川杉は今なお地域のコミュニティを維持する大事な役目も担っています。

Information

住所

御所市西佐味