多くの人に支えられて創業したマカロン店「patisserie petit ami」で、誰かの笑顔を作りたい。

  • 事業者

文=福田 香谷(pâtisserie petit ami)

小さい頃から「なるべく口に入れるのは自然なものを」と言う両親のもとで育てられ、おそらく他の同年代の子どもたちよりも手作りの物を食べる機会の多い環境で育ちました。

会社員だった父は、出勤前も帰ってからも、せっせと畑に通って野菜を作っていましたので、惜しみなく、新鮮な野菜をいつも食べさせてもらっていました。母も、味噌や梅干し、ヨーグルトやパンなどを作っては食べさせてくれたので、それが当たり前で、材料がおいしいものに変わっていくのを日々感じていた幼少期だったように思います。

そんな環境だったこともあり、私もよく台所に立っていました。兄弟が多かったこともあり、料理やお菓子を作るとみんながとても喜んでくれるので、うれしくて色々なものに挑戦したのを覚えています。

高校を卒業後、1年間調理の専門学校に通い、京都の洋菓子屋さんで働いた7年で基本を学んだ後、昔から憧れていた海外に行ってみようと決意しました。フランスという国を選んだのは、フランス菓子を作っているのに、本場を知らないことに違和感を感じていたからです。

運よくフランス・パリの洋菓子店で働くことができ、それからまた運よくドイツのフランクフルトの洋菓子店で働くことができました。

2つの国のお店で働けたことはもちろんですが、実際に暮らしてみて、人々の暮らしに触れたこと、行事や文化を体験したこと、いろんなお菓子を食べ歩いたことは、今の私の財産になっています。

その後、地元御所に戻りますが、すぐに両親共の病気が発覚し、子育てもあり、お菓子の仕事が続けられなくなりました。

そんな頃、「今は無理でも続けていたらいつかできるから大丈夫」と言い、支えてくださった方がいました。「マカロン作ってみて」「シュトーレン作れる?」と、次々と注文してくださり、納品に行くとその場で食べて「おいしい!」と言ってくれたり、海外の洋菓子店の話をしたり、取り寄せたお菓子を分けてくださったり、本当に色々と助けていただきました

この頃は毎日が大変でしたが、この方の支えがあったから、細々とでもお菓子づくりを続けることができました。そして子どもが中学生になって、マカロンのお店を創業することができたのですが、そのときもたくさんの人に助けていただきました。一人では絶対にできていないと思います。

お菓子の仕事ができなかった期間、もし自分が店を持つなら何を売ろうかずっと考えていました。会社員として仕事をしながらできること。賞味期限が短い生ケーキは生産性が悪いので、前もって作ってしばらく置いておけるもの。そしてオリジナリティがあるもの。そうやって考えてたどり着いたのが、マカロン屋さんという結論でした。

とはいえ当時、御所でマカロンはほとんど知られていませんでしたので、自らあちこちのイベントに出店して回りました。また、コロナ禍の自粛期間中ということもあり、発送の注文をいただくことも多くありました。そうこうしているうちに卸し先も増え、生産量も増えてきていました。

そんなある日、卸先のひとつである酒屋さんの奥さまから、「ごせまち」で店舗を持ってみないかというお話をいただきました。

初めは、私にはまだ早いと思いお断りしていたのですが、一度物件を見学に行ったときに一目で気に入り、挑戦することを決めました。そして2023年の11月12日、御所まちで毎年開催される「霜月祭」に合わせてお店をオープンすることができました。

もともとお好み焼き屋さんだったという店内は面白いつくりになっています。氷を入れて冷やす昔の冷蔵庫はディスプレイで使わせていただいて、置いてあったタンスもそのまま使わせていただいています。窓ガラスの模様も素敵で、照明が当るととてもきれいです。

まだオープンして1年も経っていないお店ですが、小さい頃からの夢だったお店を持つことができ、お店に来てくださるお客様がいることをとてもうれしく思っています。

商品の種類も増えました。定番のマカロン6種類に加えて、シーズンごとに味を変えた「季節限定マカロン」を作り、常時大体10種類のマカロンをご用意しています。

うちのマカロンは、少し大きめでクリームもたっぷり、ボリュームがあります。甘過ぎないように、そして素材の味を生かすように作っています。季節限定マカロンは、大和当帰や芍薬といった生薬や、ぶどうなどの旬のフルーツを使い、クリームの中にソースやジャムが隠れていたり、果肉が入っていたり、マカロンだけどケーキのように楽しんでいただけるように作っています。

フランス地方の代表的なクッキーを詰め合わせたフランスクッキー缶や、寒い国独特の香辛料を使ったドイツクッキー缶なども人気です。

冬季限定でお出しするドイツの伝統菓子「シュトーレン」も、たくさんご注文いただいております。

それ以外にも、季節限定でチョコレート、クリスマスの時期にはケーキなど、年々商品が増えてきています。

お店ではお飲み物もお出ししていますので、お好きなマカロンやクッキーを選んで、ゆっくり過ごしていただけたらうれしいです。

これから少しずつ、自分のやりたいこと、伝えたいこと思いを込めた、自分だからできる商品を作り、お客様を一人でも多く笑顔にできたらなと思っています。

私が小さい頃の御所まちは、お祭りや行事も多く、子どもたちも多く、大変にぎわっていました。またあの活気が戻ってほしい。そのために私にできることがあるとしたら、今まで学んできたことをお菓子という形にして伝え、みんなに喜んでもらうことかなと思っています。

Fukuda Kaya

寄稿者の写真

御所まち出身。マカロン専門店「patisserie petit ami」オーナー兼パティシエ。「なるべく口に入れるのは自然なものを」と言う両親のもとで育てられる。調理師専門学校で1年、京都の洋菓子店で7年、菓子作りを学んだ後、渡欧。フランス、ドイツの洋菓子店で勤め、帰国後は両親の闘病、子育てなどを経て2023年11月に御所まちでお店を開業。誰かの笑顔を作りたいという思いで、日々菓子作りを続けている。